人流データとは、「人が移動する流れ」を表したデータであり、人がいつ・どこに・どれくらい滞在しているのか、またどのように移動しているのかを把握できます。これらのデータは、エリアマーケティングなど幅広い分野で称されています。 こちらの記事では、人流データとはどのような形で取得されるのか、どのように活用されているのかをまとめました。
私たちが現在使用しているスマートフォンの多くは、GPSによって現在地を把握できる機能が搭載されています。この機能を活用して地図アプリやナビゲーション、ライフログ、カレンダー、SNSなどさまざまなアプリで多彩なサービスが提供されています。
このようなアプリから、ユーザーの同意を得た上で集められた匿名の位置情報が人流データとして活用されています。GPSで現在地を把握する場合、周りにある建物や衛星の配置によって誤差が生じますが、約1〜10mの誤差であるとされています。
携帯電話の基地局を使用することによって人流データの獲得も行えます。携帯電話各社では、それぞれのモバイルネットワークの基地局における端末数を算出し、その数をもとにして人口の推計を行って人流データとして活用しています。
前述したスマートフォンのGPSは、もしGPS機能がオフになっている場合には使用できませんが、基地局情報を使用する場合にはGPS機能をオフにしていたとしても基地局に認識される点、そしてGPS機能が搭載されていない従来型の携帯電話の情報も得られる点がポイントといえます。
ただし、位置精度はGPSと比較すると劣る面もあるため、小規模なエリアを分析するケースには向いていません。さらに携帯電話の基地局を使用するという性質から、データが特定の携帯電話会社に偏る点がデメリットです。
Wi-Fiアクセスポイントを利用した人流データの取得も行われています。街中には、さまざまな場所にWi-Fiアクセスポイントが設置されていますが、このアクセスポイントに接続した端末情報が人流データとして活用されています。
Wi-Fiの利用により、例えば屋内や地下街などGPSや携帯電話の電波が届かない場所だったとしても位置情報の取得が可能である点がメリット。さらに、「SSID」と呼ばれるWi-Fiアクセスポイントの名称などによって店舗の判別も可能です。
また、Wi-Fi接続サービスの中には訪日外国人向けサービスも提供されています。この接続サービスの使用によって得られたデータを活用すると、訪日外国人のみに絞った人流解析につなげられます。
「ビーコン」とは、Bluetoothの信号を使用して情報発信する端末やその通信方法を指します。このビーコンを使用して人流データを取得する方法もあります。
この場合は、施設の中にスマートフォンに搭載されているBLE(Bluetooth Low Energy)機能と連携可能なビーコンを配置します。そして対応するアプリにてビーコンへの接続を認識した位置情報を収集したものが、人流データとして活用することが可能です。
このようにして収集されたデータは、特定の施設内における行動などを分析するのに役立てられます。
例えば、1番目に挙げた混雑状況の可視化については、人流データを用いることによって今どこが混雑しているのかリアルタイムな把握が可能に。そのデータをわかりやすい形で可視化し、他のお客さまが確認できるようにすれば混雑状況の緩和にもつなげられます。施設や店舗、乗り物などの他、観光地などでも活用できるでしょう。
また、ショッピングセンターや百貨店においても人流データを用いることで、お客さまにとって人気のある店舗はどこなのか、時間帯によってどのような流れになっているかなどを把握でき、店舗の運営に活かせます。
このように、人流データは多岐にわたる分野で活用されています。
継続的に人の流れや行動について分析できる人流データは、企業にとっては今や欠かせないものとなっています。人流データの取得方法にはさまざまなものがあり、そこで獲得したデータを分析することで企業のマーケティングに活用されています。今後も人流データの活用が進み、多彩な分野における効率性・収益性のアップにもつながると期待されているといえるでしょう。
データ分析のプロセスとは収集・可視化・分析の3段階があります。各段階によってデータの状態が異なり、どの状態のデータが欲しいのか見極める必要があります。以下に各プロセスとデータの状態を解説し、対応できるおすすめのサービスも紹介しています。
主に携帯電話を通じて集められた人々の動向「人流データ」を活用し、結果に満足できるサービスを選びましょう。
このデータは、人の流れや動向・性質などを数量的に把握して、推計や分析は自社で行うことができます。地域間のばらつきがない基地局ベースの測位で、母数の大きなデータを取得できるサービスがおすすめ。
データをわかりやすく可視化すると、会議など意思決定の場で使うことができます。人流動向の現状把握をするためには属性データもある、細かい範囲で測位できるGPSデータを取得できるサービスがおすすめ。
分析されたデータは、早期課題解決のためのアクションがすぐに起こせます。一般的な可視化・分析よりも、より課題解決へ導けるデータを求めるなら、分解能が高くデータのゆがみを解消しているサービスがおすすめ。
※選定条件
2022年9月5日調査時点において、「人流データ分析」でGoogle検索した全27社において公式サイトで明記されている内容から以下の条件でピックアップしました。
■収集…基地局ベースデータによる、地域間差がなく、契約台数が一番多い(2022年9月調査時点)会社であるNTTドコモが提供する「モバイル空間統計」※参照元:NTTドコモ公式HP:(https://www.tca.or.jp/database/)
■可視化…空間分解能の範囲が狭いGPSベースと、通信キャリアならではの契約情報による属性が入手できる一社KDDIが提供する「KDDI Location Analyzer」
■分析…空間分解能の範囲が狭いGPSベースで、データのゆがみをとるマップマッチング処理を行っているため仮説検証分析まで行えることを公式サイトで記載している一社LocationMindが提供する「xPop」