人流データの分析や依頼を行う際には、データの活用方法や個人情報漏洩対策、分析するために必要な専門知識の有無、即時効果を期待するものではないことへの理解など4つの注意すべきポイントがあります。ここでは、以上の注意ポイントをふまえた上で選択すべき納品方法について解説します。
人流データの納品方法の種類は、ローデータでの納品の他に、加工を施した状態の納品、可視化を済ませた状態での納品に分類されますが、多くの場合は加工・可視化を施した状態で納品されます。
以下、加工後や可視化後の納品方法について、詳しく紹介していきます。
集計・分析した人流データをPDFファイルやCSVファイル、XLSファイル、文章ファイルなどにレポート形式でまとめて納品する方法です。
レポート形式の場合は、データがそのまま使える形になっている場合が多いため、必要な箇所を抜き出したりフォーマットを調整したりなどすれば、内部利用はもちろんのこと、対外的に公表するデータとしても扱えます。
レポートは、重要なデータソースではありますが、リアルタイムで更新されるものではないため、日々変化する人流データとして情報とのタイムラグが生じる可能性もあります。また、多数の部門や多様なデータのニーズがある場合には活用するためのレポート作成が複雑なものになってしまいます。
ダッシュボードは、複数の情報を集約して表示する掲示板のようなものです。分析用のツールに搭載されていることが多い機能のひとつで、集計・分析した人流データを、折れ線グラフや棒グラフ、分布図などで一覧で確認できるようにしています。
種々のデータをまとめて直感的に、かつリアルタイムで把握できるので、定常的に人流データを観測する必要がある場合には、ダッシュボードがあると便利でしょう。また、クラウドツールの場合であれば、出先や移動中にスマートフォンやタブレットからでも閲覧可能です。
ダッシュボードでの納品のデメリットは、納品後の有効活用にもデータ分析のスキルが必要になる点です。ある程度のスキルがなければ、取得したデータから誤った判断をしてしまうリスクもあります。また、クラウドツールと併せて活用する際、導入コストがかかるので注意しましょう。
インフォグラフィックは、集めた膨大な量の情報をイラストやピクトグラム、チャートや表などでわかりやすく表現したものを指します。 多くの情報を簡潔にまとめることができるため、電車の路線図やプレゼン資料などにも採用されています。
インフォグラフィックは、文章だけでは伝わりにくい内容も、見た人が理解しやすいのが大きなメリットです。対外的な活用シーンも幅広く、特定の言語を必要としないため、グローバルに通用する情報伝達手段として役立ちます。
インフォグラフィックは、集めたデータを整理した上で、一目でわかるようイラストやグラフィックに加工しての納品になるため、制作に時間がかかります。また、データの整理がきちんとできないと、誤った情報を伝搬してしまうリスクもあります。
グラフやイラストは、文章のように細かく補足することができないため、誤解を招くこともあるので注意が必要です。
人流データを動画にまとめていれば、人の流れや周辺状況の変化などを時系列で直感的に把握しやすくなります。動画の長さやまとめ方によっては、レポート形式の場合よりも短期的に状況を理解しやすいでしょう。
人流データの納品方法としてはこのほか、画像などで視覚的に表現してわかりやすくするなどの方法が挙げられます。
動画は「音」「動き」「時間軸」という様々な要素を含むことができるので瞬時に多くの情報を伝えることができます。映像にはテロップ(文章)も入れることで、より多くの情報を伝えることも可能です。動画配信の巨大プラットホームでもあるYouTubeなどを利用できるため、拡散性が高い点も大きなメリットの1つです。
動画は多くの情報を盛り込むことができるぶん、機材、撮影、編集など手間や費用が必要になります。また、最低限のクオリティがないとマイナスイメージに繋がるリスクもあるため、コスト増加は避けられません。
また、動画を途中から視聴したり、飛ばして見る人もいるため必要な情報が伝わらなかったり、誤解が生じるリスクもあります。
「シェープファイル」形式のあるローデータを、3次メッシュポリゴンを用いて様々な表現で可視化する事例です。
滞在人口が多い場所から少ない場所を、赤から青の10段階のポリゴンステップカラーで表現したり、Z値(高さ情報)に転記して3Dで表現することで時系列による可視化も実現しました。
G空間情報センターが公開しているローデータをESRIジャパンが加工しインフォグラフィック化した事例です。2019年と2021年のデータを並べて複数のグラフや分布マップなどで表現することで、一目で人数の推移やコロナ流行の範囲が比較できるグラフィックに仕上がっています。
人流データを有効活用するためには、用途に応じた納品形式で依頼する事が重要です。しかしどの納品形式にもメリットやデメリットがあるため、 選ぶときには注意が必要です。ローデータの活用には分析スキルが必要であるということや、情報の伝搬能力は向上する加工データや可視化データは、その分コストや間違った情報の伝搬といったリスクも生じることを知った上で活用しましょう。
ここでは、人流データ分析サービスを提供する会社の中からおすすめの3社ご紹介しています。こちらも合わせてご参考にしてください。
データ分析のプロセスとは収集・可視化・分析の3段階があります。各段階によってデータの状態が異なり、どの状態のデータが欲しいのか見極める必要があります。以下に各プロセスとデータの状態を解説し、対応できるおすすめのサービスも紹介しています。
主に携帯電話を通じて集められた人々の動向「人流データ」を活用し、結果に満足できるサービスを選びましょう。
このデータは、人の流れや動向・性質などを数量的に把握して、推計や分析は自社で行うことができます。地域間のばらつきがない基地局ベースの測位で、母数の大きなデータを取得できるサービスがおすすめ。
データをわかりやすく可視化すると、会議など意思決定の場で使うことができます。人流動向の現状把握をするためには属性データもある、細かい範囲で測位できるGPSデータを取得できるサービスがおすすめ。
分析されたデータは、早期課題解決のためのアクションがすぐに起こせます。一般的な可視化・分析よりも、より課題解決へ導けるデータを求めるなら、分解能が高くデータのゆがみを解消しているサービスがおすすめ。
※選定条件
2022年9月5日調査時点において、「人流データ分析」でGoogle検索した全27社において公式サイトで明記されている内容から以下の条件でピックアップしました。
■収集…基地局ベースデータによる、地域間差がなく、契約台数が一番多い(2022年9月調査時点)会社であるNTTドコモが提供する「モバイル空間統計」※参照元:NTTドコモ公式HP:(https://www.tca.or.jp/database/)
■可視化…空間分解能の範囲が狭いGPSベースと、通信キャリアならではの契約情報による属性が入手できる一社KDDIが提供する「KDDI Location Analyzer」
■分析…空間分解能の範囲が狭いGPSベースで、データのゆがみをとるマップマッチング処理を行っているため仮説検証分析まで行えることを公式サイトで記載している一社LocationMindが提供する「xPop」