マーケティングや経営戦略にも活用されている人流データ。小売や外食分野においても、経営に人流データを活用する企業が増加しています。ここでは、小売・外食分野における人流データの活用事例をご紹介します。人流データの活用方法でお悩みの方は、参考にして頂ければと思います。
小売や外食分野では、さまざまな用途で人流データが活用されています。例えば、自社アプリと位置情報を連動させ、来店頻度に応じてクーポンや特典を提供している企業があります。このユースケースを例に取ると、利用者はお得な特典を受けられる一方、企業側は来店した店舗や頻度に関するデータが得られます。
このほか、出店計画や販促活動に人流データ分析を用いている企業もあります。人流データ分析は顧客満足度向上に繋がるだけでなく、自社の売上を高め、事業拡大をサポートする武器にもなるでしょう。
小売・外食分野では人流データ分析を活用するには、現状の社内状況と依頼先の分析力がカギとなってきます。こちらでは課題にマッチする分析会社選びを解説し、おすすめのサービスを紹介しています。
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ファミリーレストランを展開するジョイフルでは、人流データと自社アプリを連動させることで、来店客数の増加を実現しました。ユーザーは、来店のたびにアプリに自動でスタンプが付与され、ランクがアップしてさまざまな特典を受けられます。来店スタンプは、店内のビーコンとスマホの位置情報が連動して付与する仕組みになっています。
また、ランク制度に応じたクーポンが配信した結果、月4回以上来店するユーザーは約12倍に増えたとのことです。
作業服だけではなく、最近では女性衣料などで話題のワークマンも商圏分析や出店戦略に人流データ分析を活用しています。当該エリアに顧客となるユーザーがどれだけいるかを推計する「ワークマン人口」という独自の基準を設け、出店用地の選定は、このワークマン人口や人口統計、店舗前の交通量データなどを活用しています。こうしたデータを緻密に分析することで、立地と売上の相関関係を判断しながら出店用地の洗い出しを行っているそうです。
メガネやコンタクトの販売店を全国展開するメガネスーパーでは、地域に根ざした広告施策のために、ポスティングの精度向上に人流データを利用しています。最初に店舗を中心に商圏を作成し、細分化してポスティングマップを作成。エリアごとの統計値も表示させるなど、ポスティングの精度向上に寄与する仕組みも整えています。
一連の取り組みの結果、効率的な配布と拡大戦略による売上増加を実現しています。
1988年にサントリーとUCCの共同出資で設立されたのが、PRONTOの運営元である株式会社プロントコーポレーション。イタリアのバールをモチーフとし、昼はカフェ、夜はアルコール類が楽しめるお店として好評を博していました。しかし、コロナ禍の影響により、客数が大きく減少。戦略の見直しが急務となりました。
そこで打ち出されたのが、昼は20~30代の働く男女向けに、よりおしゃれ感を強調。夜はこれまでになかった「ネオ酒場」というリブランディング。メニュー、制服、ロゴなども刷新されました。その効果を検証するために導入されたのが、データワイズが提供するArea Marketer。リブランディングにより、20代の来店客数が大きく増加したという効果を確認できたそうです。加えて来店頻度の増加、滞在時間の増加といった効果もあったとのこと。以後も、さらなるサービス充実を目指して、人流データを有効活用していきたいとしています。
こちらのケースでは、小売業界における人流データの活用方法として、いくつかの事例が紹介されています。そのひとつとして、スーパーマーケットの肉売り場や魚売り場に、レトルトソースやスパイスなどが置かれるようになったケースをピックアップ。以前は、肉売り場には肉類、魚売り場には魚介類、ソースやスパイスは香辛料売り場と、明確に配置を区分けしていたそうです。
その状況を人流データで解析したところ、20代~30代の顧客は、それぞれの売り場に足を運ぶ傾向にある反面、50代以上の顧客は肉あるいは魚売り場だけに向かい、スパイスなどが置いてある香辛料の売り場は素通りしてしまう傾向が高いという事が判明したのだそうです。
そうした実情を鑑み、肉売り場や魚売り場にも、それぞれの食材の調理に適したレトルトソースやスパイスなどを陳列するようにしたところ、50代以上の顧客による「ついで買い」が大きく増加したとのこと。売り場に、商品紹介のメディアとしての機能を持たせることができたとしています。
こちらでは、JR京浜東北線・川口駅前に所在する大型商業施設「かわぐちキャスティ」に導入されている顧客分析システムが、NHKの情報番組にて取り上げられた旨が紹介されています。かわぐちキャスティは2005年に竣工し、地上10階・地下1階の計11フロアを有する複合施設。金融機関やクリニック、飲食店、アパレル、スポーツジムなどが入居しています。
そんな同施設には、コニカミノルタと丸紅ネットワークソリューションズが共同開発した顧客分析システムを設置。カメラ映像から時間ごとの来場者を分析することで、入居するテナント各店が、より顧客満足度を向上させるための方策や戦略立案に活用しているとしています。
ここでは、人流データ分析を小売や外食分野での課題解決に導いた実際の事例をいくつか紹介しました。近い将来にデータ分析はどこまでの課題を解決できるかをこちらのページではまとめています。
小売・外食分野では、出店から販促まで、さまざまな領域で人流データが活用されています。活用方法次第では、より広範な施策も立てられるでしょう。しかし、人流データをビジネスで活かすには、分析会社の強みと自社のニーズがマッチしている必要があります。ここでは、自社のフェーズに適したパートナー候補としておすすめの3社を紹介しています。
データ分析のプロセスとは収集・可視化・分析の3段階があります。各段階によってデータの状態が異なり、どの状態のデータが欲しいのか見極める必要があります。以下に各プロセスとデータの状態を解説し、対応できるおすすめのサービスも紹介しています。
主に携帯電話を通じて集められた人々の動向「人流データ」を活用し、結果に満足できるサービスを選びましょう。
このデータは、人の流れや動向・性質などを数量的に把握して、推計や分析は自社で行うことができます。地域間のばらつきがない基地局ベースの測位で、母数の大きなデータを取得できるサービスがおすすめ。
データをわかりやすく可視化すると、会議など意思決定の場で使うことができます。人流動向の現状把握をするためには属性データもある、細かい範囲で測位できるGPSデータを取得できるサービスがおすすめ。
分析されたデータは、早期課題解決のためのアクションがすぐに起こせます。一般的な可視化・分析よりも、より課題解決へ導けるデータを求めるなら、分解能が高くデータのゆがみを解消しているサービスがおすすめ。
※選定条件
2022年9月5日調査時点において、「人流データ分析」でGoogle検索した全27社において公式サイトで明記されている内容から以下の条件でピックアップしました。
■収集…基地局ベースデータによる、地域間差がなく、契約台数が一番多い(2022年9月調査時点)会社であるNTTドコモが提供する「モバイル空間統計」※参照元:NTTドコモ公式HP:(https://www.tca.or.jp/database/)
■可視化…空間分解能の範囲が狭いGPSベースと、通信キャリアならではの契約情報による属性が入手できる一社KDDIが提供する「KDDI Location Analyzer」
■分析…空間分解能の範囲が狭いGPSベースで、データのゆがみをとるマップマッチング処理を行っているため仮説検証分析まで行えることを公式サイトで記載している一社LocationMindが提供する「xPop」