さまざまな分野で活用が活発化している人流データ分析。観光分野では、観光地の活性化だけでなく、観光客の満足度や周遊性向上に活かそうとする取り組みも行われています。ここでは、観光分野における人流データの活用事例をご紹介します。
観光分野において、人流データ分析はさまざまな領域で活用されています。例えば、人の動きから各観光スポットの来訪状況を把握したり、周遊傾向の分析に役立てたりされています。こうした客観的なデータを利用すれば、従来とは違った観光戦略やプロモーション企画を立てることも不可能ではありません。
また、観光地と近隣地区の人流の違いを測定し、周遊性を高めるために活用するケースも見られます。活用方法次第では、観光地の見えない課題や問題を洗い出し、ユーザーの満足度向上に繋げることも可能でしょう。
観光分野での活用は分析力がカギとも言えます。次の行動に即したサービスを依頼することが肝心です。こちらでは課題にマッチする分析会社選びを解説し、おすすめのサービスを紹介しています。
神奈川⼤学とAvintonジャパン、横浜観光コンベンション・ビューローの3者は、みなとみらい地区活性化のために人流データ活用の取り組みを行いました。主に観光客の移動方法や、滞在時間などの周遊データを活用しています。
データを分析すると、観光客は横浜駅からの移動が多いことが判明しました。そこでモビリティが課題として浮かび上がり、観光客の移動手段について研究を始めたそうです。こうしたデータがあれば、根拠を持ってモビリティ・ソリューションや施策を打ち出すことが可能となります。
静岡県藤枝市では、人流データ分析で過疎地域を可視化する取り組みを実施しました。同市の藤枝地区は過疎化が進み、店舗数が減少していたとのこと。一方で地区内にある蓮華寺池公園には毎年多くの観光客が訪れており、藤枝地区まで立ち寄る人が少ないなどアンバランスが問題になっていました。
そこでIoTセンサーを使い、複数箇所で蓮華寺池公園の来園者数や混雑状況を測定。計測の結果、周辺地域で人流に偏りがあることが判明しました。藤枝市では、蓮華寺池公園の混雑状況を手軽に確認できる仕組みを、分析結果データから構築中とのことです。
東北6県と新潟県への観光客誘致に取り組む一般社団法人東北観光推進機構では、観光スポットの来訪者数や周遊傾向を把握するために人流データを活用しています。同機構は、2021年度に東北に関する観光データを管理するためのプラットフォームを構築。SNSのアクセスや消費購買データも取り入れ、多角的なデータ分析を可能にしました。
プラットフォームで人流データなどを可視化した結果、数千箇所の観光スポットの来訪者の属性把握や、各スポットの前後訪問・周遊状況を一目で把握することが可能に。従来の手法と比べて作業時間の削減を実現し、適切な施策の検討もできるようになりました。
神戸、長崎と並ぶ日本三大中華街として知られる横浜中華街。1971年に設立され、約400の店舗・企業が加盟する横浜中華街発展会協同組合では、横浜中華街のさらなる発展と地域経済の活性化を目的として、クロスロケーションズに人流分析プラットフォームの導入を2020年に依頼。
中華街に来訪した観光客のGPSデータを基に、訪問者の動向を分析。近隣の横浜スタジアムや山下公園なども含め、人々の通行量、滞在時間、および訪問者の性別・年代情報などを収集するというやり方を行っているとのこと。
集計されたデータを、中華街に訪問した観光客の行動パターンを、コロナ禍の前と後、平日と休日といった状況別に分析。中華街に店舗を構えるオーナーは、そうしたデータを把握し、より魅力的なサービスや施策の立案に、有効活用されているとしています。
観光業に甚大な影響を及ぼしたコロナ禍。栃木県庁では、減少した観光客数の実態調査ならびに観光需要回復のための行政施策の効果検証のために、「KDDI Location Analyzer」を導入。それまで観光客数や観光動態の調査は手間や費用の関係で年一回しか行えなかったそうですが、Location Analyzerによって、低コストでリアルタイムの調査分析が可能に。
観光客の人数はもとより、性別や年代、居住地などの属性も把握できるようになったため、誘客活動をどのエリアに重点を置いて行うかといった戦略を立てやすくなったとのこと。また、特定の施設を訪れた観光客が、どのエリアに宿泊するかというデータも可視化できるようになったそうです。
瀬戸内海の東部、神戸と四国を結ぶ位置に浮かぶ淡路島は、京阪神エリアからアクセスしやすい観光地であり、名所やグルメ、温泉なども充実。しかしながら、訪日外国人の来訪データを取得できていないという課題を抱えていたとのこと。そこでNTTの人流DXソリューションを導入。
いつ、どんな人が、どこからどこへ移動したのか、そこにはどんな施設があるのかといったことが把握できるようになり、国籍別・季節別の訪日外国人旅行客数などもデータ化されたとのこと。観光客の国籍ごとや、季節ごとなどの要素に応じて、より効果的な観光プロモーションを立案するために役立てているそうです。
ここでは、人流データ分析を観光分野の課題解決に導いた実際の事例をいくつか紹介しました。近い将来にデータ分析はどこまでの課題を解決できるかをこちらのページではまとめています。
人流データ分析は、さまざまな活用方法が可能です。観光分野においても、観光戦略の立案や提言、観光地の混雑対策など、幅広く応用できます。いずれにせよ、人流データ分析をビジネスで活かすなら、自社のニーズにマッチした分析会社を選ぶことが重要です。ここではおすすめの会社を紹介していますのでご覧ください。
データ分析のプロセスとは収集・可視化・分析の3段階があります。各段階によってデータの状態が異なり、どの状態のデータが欲しいのか見極める必要があります。以下に各プロセスとデータの状態を解説し、対応できるおすすめのサービスも紹介しています。
主に携帯電話を通じて集められた人々の動向「人流データ」を活用し、結果に満足できるサービスを選びましょう。
このデータは、人の流れや動向・性質などを数量的に把握して、推計や分析は自社で行うことができます。地域間のばらつきがない基地局ベースの測位で、母数の大きなデータを取得できるサービスがおすすめ。
データをわかりやすく可視化すると、会議など意思決定の場で使うことができます。人流動向の現状把握をするためには属性データもある、細かい範囲で測位できるGPSデータを取得できるサービスがおすすめ。
分析されたデータは、早期課題解決のためのアクションがすぐに起こせます。一般的な可視化・分析よりも、より課題解決へ導けるデータを求めるなら、分解能が高くデータのゆがみを解消しているサービスがおすすめ。
※選定条件
2022年9月5日調査時点において、「人流データ分析」でGoogle検索した全27社において公式サイトで明記されている内容から以下の条件でピックアップしました。
■収集…基地局ベースデータによる、地域間差がなく、契約台数が一番多い(2022年9月調査時点)会社であるNTTドコモが提供する「モバイル空間統計」※参照元:NTTドコモ公式HP:(https://www.tca.or.jp/database/)
■可視化…空間分解能の範囲が狭いGPSベースと、通信キャリアならではの契約情報による属性が入手できる一社KDDIが提供する「KDDI Location Analyzer」
■分析…空間分解能の範囲が狭いGPSベースで、データのゆがみをとるマップマッチング処理を行っているため仮説検証分析まで行えることを公式サイトで記載している一社LocationMindが提供する「xPop」